「燕の巣」と呼ばれているものは、ひとつではありません。
マレーシア、インドネシア、タイ、ミャンマー。同じ名前で売られていて、同じように見えるものが、測ると違う値を出します。
この記事では、査読を通った文献で確認できた数字だけを並べます。どの産地が良いという話ではありません。「同じ名前でも中身は同じではない」という、それだけの話です。
色は、はっきり違う。
2022年に発表された研究で、タイ南部8県(スラートターニー、ソンクラー、ナコンシータンマラート、パッタニー、クラビー、パッタルン、チュムポーン、トラン)で採れた巣が調べられました。家(バードハウス)産と洞窟産の両方で、地域あたり家産14検体、洞窟産12検体です。
FACT
もっとも差が出た2検体の比較。明るさを示すL値は、家産(ソンクラー県)88.41、洞窟産(パッタルン県)81.31。赤みを示すa値は1.01と1.91。黄みを示すb値は11.63と17.45。結晶度は35.52パーセントと38.79パーセント。可溶性固形分は100グラムあたり15.57グラムと13.85グラム。EDX分析では、洞窟産のほうがカルシウムが多く、家産のほうがナトリウムが多かった。
出典:Chantakun K, Nilsuwan K, Sripradit A, Benjakul S. International Journal of Food Science and Technology. 2022;57(4):2447-2458.
家産のほうが明るく、洞窟産のほうが赤み・黄みが強い。ここまでは、見て分かる違いです。
ただし、タンパク質のパターンには「はっきりした差はなかった」。
同じ研究の、もうひとつの結果です。
赤外分光のスペクトルと、EDX分析のパターンは産地によって違いました。しかし、タンパク質のパターンには明確な差がなかったと報告されています。
ここは、読み飛ばされやすいところだと思います。
色は違う。ミネラルの構成も違う。でも、タンパク質の並びは、見た目ほど違わなかった。
「白いほど中身が良い」という言い方が成り立ちにくいのは、こういう結果があるからです。色の話は「白いほど良い」は本当か。漂白という、見えない加工の話。に分けて書いています。
亜硝酸は、地域によって幅がある。
2021年の総説に、地域別の亜硝酸の測定値がまとめられています。
- インドネシア(複数地域):3.11〜18.28ppm(平均8.40ppm)
- ミャンマー産:4時間浸水後の水を測った値で、亜硝酸0.27ppm、硝酸4.0ppm
- 洞窟産(インドネシア・マレーシアの小島)は、家産より硝酸・亜硝酸が高いとされている
総説には、許容される目安として30ppm以下という水準、世界保健機関が示す亜硝酸の1日摂取許容量として体重1キログラムあたり0〜3.7ミリグラムという数字も併記されています。
同じ総説には、ミャンマー産の成分として、粗タンパク質53.5〜59.3パーセント、ナトリウム0.17パーセント、カリウム237.1ppm、カルシウム0.71パーセント、マグネシウム361.3ppm、亜鉛12.3ppmという値も挙がっています。
マレーシア産の6地域7検体を調べた研究、および洞窟産とバードハウス産を直接比較した研究については、洞窟の燕の巣は、本当に安全なのか。― 重金属と、亜硝酸のこと。にまとめました。
言えること、言えないこと。
言えること
- 産地によって、色・ミネラル構成・亜硝酸の値が違う測定結果が複数の文献にある
- タイ南部の研究では、色は明確に違ったが、タンパク質のパターンには明確な差が出なかった
- インドネシアの複数地域では、亜硝酸が3.11〜18.28ppmの幅で報告されている
言えないこと
- どの産地が優れているか、安全か。これらの文献はそういう比較をしていません
- 日本に輸入されているものが、これらの測定値の範囲に入るのか。編集部は確認できていません
- 検体数が限られています。タイの研究は2019〜2020年に1つの業者から集めた検体で、著者ら自身が地理的な代表性の限界に触れています
だから、産地を聞くことに意味がある。
「マレーシア産です」だけでは足りません。マレーシアのどこで、洞窟か建物か、いつ採れたものか。そして、何を測ったのか。
ここまでの数字が意味するのは、そういうことです。値に幅があるなら、幅のどこに入っているのかを示せる記録が必要になります。
WHAT WE DON’T KNOW YET
まだ分かっていないこと
- 日本に流通している燕の巣を対象にした、産地別の測定結果。見つけられていません
- 同じ産地・同じ建物でも、季節や年による変動があるのかどうか。確認できていません
- 色とミネラル構成の違いが、何に由来するのか。上記の研究は原因を特定していません
分からないことを、分かったことにはしない。
DISCLOSURE
この記事について
ツバメディアは、日本伴照株式会社が運営しています。同社は燕の巣を扱う事業者であり、中立な第三者ではありません。他社商品との比較や優劣の判定は行いません。研究の説明は、原著論文に書かれている範囲を超えないようにしています。記事のなかで商品を販売することはありません。特定の産地を優れているとも、危険であるとも書きません。
アイキャッチのイラストは、ツバメディア編集部が画像生成AIを使用して制作したものです。実在の場所や品物を撮影した写真ではありません。
SOURCES
- Chantakun K, Nilsuwan K, Sripradit A, Benjakul S. House and cave edible bird’s nest: Characteristics and quality of sterilised beverages containing the selected bird’s nest. International Journal of Food Science and Technology. 2022;57(4):2447-2458.
- Chok KC, Ng MG, Ng KY, Koh RY, Tiong YL, Chye SM. Edible Bird’s Nest: Recent Updates and Industry Insights Based On Laboratory Findings. Frontiers in Pharmacology. 2021;12:746656.(総説)
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