燕の巣には、別のものが混ぜられることがあります。
これは疑いではなく、査読を通った文献に、混ぜ物の名前と、それを見分ける方法が並んでいるという意味です。
先に断っておきます。市場のどれくらいが混ぜ物入りなのか、編集部は数字を持っていません。割合を語れる一次資料にたどりつけていないので、ここでは書きません。書くのは、「何が混ぜられると報告されてきたか」と、「見分ける方法が、どこまでできてどこからできないか」です。
文献に名前が挙がっている12の物質。
FACT
2021年の総説には、燕の巣の製品に加えられる物質として、白キクラゲ(Tremella fuciformis)、ゼリー、魚の浮き袋、卵白、豚皮、カラヤガム(Sterculia urens)、紅藻、寒天、ブドウ糖、ショ糖、加水分解した海洋性コラーゲン、グルタミン酸ナトリウムが挙げられている。
出典:Chok KC ほか. Frontiers in Pharmacology. 2021;12:746656.(総説)
「かさ増し」は、数字にすると2〜10パーセント。
同じ総説には、混ぜ物の量についての記述もあります。
カラヤガム、紅藻、白キクラゲといった物質は、最終重量の2〜10パーセントを占めることがあり、そのぶん燕の巣の粗タンパク質量は最大6.2パーセント下がるとされています。
見た目のかさは増え、中身は薄くなる。この方向にしか働きません。
見分ける方法は、たくさんある。ただし、どれも万能ではない。
総説には、真贋を判定する方法が10種類以上まとめられています。実務として意味があるのは、それぞれの限界のほうです。
タンパク質の泳動パターン(電気泳動)
洞窟産は30キロダルトンと35キロダルトン、家(バードハウス)産は120キロダルトンと140キロダルトンのバンドが出る。白キクラゲは22・35・75キロダルトン、卵白は35・75キロダルトン、魚の浮き袋はバンドが流れる、ゼリーはバンドが出ない。
ただし、タンパク質の抽出が必要で、試料は壊れます。
リアルタイムPCR
白キクラゲ・寒天・豚皮・卵白の4つを検出する方法が設計されています。検出限界は、燕の巣0.5パーセント、白キクラゲ0.001パーセント、寒天0.5パーセント、揚げた豚皮0.001パーセント、卵白1パーセント。
白キクラゲと豚皮は0.001パーセントまで見える。一方で寒天と卵白は0.5〜1パーセントまでしか見えません。
走査型電子顕微鏡
本物の未加工の巣は、数ミクロン以下から数ミクロンの、不規則な三次元の網目構造に見える。キクラゲ・寒天・豚皮でつくった偽物は、網目ではなく粒状・棍棒状に見える。ただし見る人の熟練に依存し、定量はできません。
赤外分光
1700カイザーより低い領域で、本物と混ぜ物入りのスペクトルが違う。NH基は豚皮と卵白以外の混ぜ物には無い。豚皮だけはエステルのカルボニル伸縮とC=CH基を持ち、これは燕の巣には無い。すべての混ぜ物を検出できるわけではありません。
豚ゼラチンの検出
豚のコラーゲンに特異的なアミノ酸配列に対する抗体を使う間接ELISA。検出限界は0.12、0.10、0.11マイクログラム毎グラム。豚だけを見る方法で、他の動物由来は分かりません。
そのほか
HPLCによるアミノ酸のフィンガープリント、GC-MSとLC-MS(加工の影響を受けにくいGC-MSのほうが向いているとされる)、熱重量分析(試料5〜10ミリグラム)、ハイパースペクトルイメージング。
ここから、私たちが言えること。
言えること
- 混ぜ物として文献に名前が挙がっている物質は、少なくとも12ある
- かさ増しは最終重量の2〜10パーセントに達することがあり、粗タンパク質は最大6.2パーセント下がると報告されている
- 検出方法は複数あり、豚皮や白キクラゲは0.001パーセントまで見えるものもある
言えないこと
- 市場のどれくらいが混ぜ物入りなのか。編集部は数字を持っていません
- 日本国内で流通しているものについての調査。見つけられていません
- どの検査を通っていれば安全か。この総説はそういう基準を示していません
買う側が確かめられるのは、方法ではなく記録です。
上に並べた方法は、どれも研究室の設備が必要です。店頭で消費者ができるものではありません。
だから、確かめる先は物ではなく記録になります。どこで採られたのか。どう洗われ、どう加工されたのか。何を検査したのか。その記録が出てくるかどうか。
洗浄と選別の工程については燕の巣は、洗ってあるのですか。に、色を白くする加工については「白いほど良い」は本当か。漂白という、見えない加工の話。に書いています。
WHAT WE DON’T KNOW YET
まだ分かっていないこと
- 混ぜ物の市場での割合。一次資料にたどりつけていません
- 日本国内で流通している製品を対象にした検査結果。見つけられていません
- 上記の検出方法が、実際の輸入検査でどこまで使われているのか。確認できていません
分からないことを、分かったことにはしない。
DISCLOSURE
この記事について
ツバメディアは、日本伴照株式会社が運営しています。同社は燕の巣を扱う事業者であり、中立な第三者ではありません。他社商品との比較や優劣の判定は行いません。研究の説明は、原著論文に書かれている範囲を超えないようにしています。記事のなかで商品を販売することはありません。特定の企業・製品を偽物として名指しすることもしません。
アイキャッチのイラストは、ツバメディア編集部が画像生成AIを使用して制作したものです。実在の場所や品物を撮影した写真ではありません。
SOURCES
- Chok KC, Ng MG, Ng KY, Koh RY, Tiong YL, Chye SM. Edible Bird’s Nest: Recent Updates and Industry Insights Based On Laboratory Findings. Frontiers in Pharmacology. 2021;12:746656.(総説)
POPULAR





