燕の巣の話には、聞き慣れない言葉が次々に出てきます。この媒体の記事にも出てきますし、商品の説明にも出てきます。同じ言葉が、書き手によって違う意味で使われていることもあります。そこで、私たちが使っている言葉と、読者が他所で出会う言葉を、一箇所に集めました。
HOW WE WROTE THIS
この用語集の決めごと
- この媒体の記事で使っている語と、読者が他所で出会う語の両方を載せます
- 効果や効能は書きません
- 数字には、出典と、測った条件をつけます
- 分かっていないことは、分かっていないと書きます
- 等級や格付けの優劣は判定しません
鳥と、巣のできる場所
アナツバメ(swiftlet)
食用になる巣をつくる鳥です。スズメ目のツバメとは別の系統で、アマツバメ目に属します。マレーシアでは5種が確認されています(Hydrochous gigas/Collocalia esculenta/Cypsiurus balasiensis/Aerodramus maximus/Aerodramus fuciphagus)。くわしくはアナツバメという鳥のこと。― 分かっていることと、まだ確かめていないこと。に書きました。
Aerodramus fuciphagus
食用の巣をつくる主要な種です。2022年に、この種のゲノムが構築されました(Kong ほか 2022)。
Aerodramus maximus
別の種です。洞窟の巣にはこの種のものが混じります。インドネシア・東カリマンタンで「毛燕」として流通していたものを遺伝子で調べると、この種でした(Wang X ほか 2023)。
Apus pacificus(ハリオアマツバメ)
アナツバメ属ではありません。中国・懐集で「草燕」として流通していたものを cytb 遺伝子で調べると、この鳥がつくった巣でした(Wang X ほか 2023)。
バードハウス(家産)
アナツバメが巣をつくるように建てられた建物です。巣は建物の中の板や梁につくられます。この建物での採取と洞窟での採取の違いは洞窟の燕の巣は、本当に安全なのか。― 重金属と、亜硝酸のこと。で扱いました。
洞窟産
自然の洞窟で採られた巣です。産地によって測定値が分かれることは同じ「燕の巣」でも、測ると値が違います。― 産地で分かれる数字の話。に書きました。
巣は一度きり
巣は、採取したあとに同じものが再び使われることはありません。
見た目と、かたち
官燕・毛燕・草燕
市場で見かける呼び分けです。羽毛の混入の程度や産地を指して使われますが、呼び名の定義は統一されていません。「毛燕」「草燕」として流通していたものを遺伝子で調べたら別種だった、という報告があります(Wang X ほか 2023)。呼び名だけでは中身は決まりません。
燕盞・燕条・燕碎
巣のかたちによる呼び分けです。盞はカップ状の原型、条は細長く割れたもの、碎は砕けたものを指します。かたちの違いであって、成分の違いを意味しません。
L値・a値・b値
色を数値で表す指標です。Lが明るさ、aが赤み、bが黄みにあたります。タイ南部8県の研究では、家産(L 88.41 ± 1.00/a 1.01 ± 0.04/b 11.63 ± 1.01)と洞窟産(L 81.31 ± 0.40/a 1.91 ± 0.09/b 17.45 ± 0.49)で範囲が重なりませんでした(Chantakun ほか 2022)。
結晶度
繊維の分子がどれくらい規則的に並んでいるかを表す割合です。同じ研究で、家産35.52%/洞窟産38.79%でした(Chantakun ほか 2022)。
漂白
薬剤で白くする加工です。私たちは漂白剤の使用量や検出濃度の数値を書きません。原著論文の本文を入手できていないからです。この方針は「白いほど良い」は本当か。漂白という、見えない加工の話。でも守っています。
着色
色をつける加工です。鉄分で赤くする手法があると現場では言われますが、私たちはまだ一次資料で確認できていません。
中身
唾液分泌物
巣の材料です。乾いた巣の70〜80%を占めます。燕の巣は、何でできているのですか。で扱いました。
タンパク質
巣の主成分です。ただし同定された種類の数は、文献で食い違います。ゲノムを使った研究では398種類(Kong ほか 2022)、データベースを使わない4検体の研究では37種類(Wang X ほか 2023)。方法が違うので、単純には比べられません。
糖タンパク質
タンパク質に糖鎖がついたものです。燕の巣の成分はこの形をとります。「シアル酸の、その先へ。― 燕の巣を分子で見ると、何が見えるのか。」で扱いました。
シアル酸
糖鎖の先端につく糖の一群です。「総」と「遊離」で、数字の桁が変わります。くわしくは「「シアル酸が◯%入っています」の◯は、測り方で変わります。」に書きました。
総シアル酸
酸で糖鎖を切り離してから測った量です。生の燕の巣の粉末6検体で、重量の5.77〜10.92%でした(Poon & Sze 2023)。
遊離シアル酸
切り離さずに、浮いている分だけを測った量です。ジョホール州30検体で135.04 ± 29.60 mg/kg(約0.0135%)、クランタン州23検体で95.55 ± 25.6 mg/kg(Khairunnisak ほか 2014)。総量の1/500〜1/800程度にあたります。
Neu5Ac/Neu5Gc/KDN
シアル酸は1種類ではありません。この3種を分けて測った報告があります(Wang M-H ほか 2024)。
EGF(上皮成長因子)
単体のEGFタンパク質は、まだ同定されていません。ゲノムを使った研究は、燕の巣から単体のEGFは同定されていないと明記しています(Kong ほか 2022)。見つかったのはCa²⁺結合EGF様ドメインを持つタンパク質(フィブリリン-1、プロトカドヘリン fat 4、凝固第X因子)です。一方で総説には「タンパク質1gあたり3mg以上のEGF」という記述があり、文献が食い違っています。この食い違いは「燕の巣にEGFが入っている」と言われますが。― 単体のEGFは、まだ見つかっていません。で扱いました。
可溶性固形分
水に溶けて出ていく分です。家産100gあたり15.57 ± 0.10g/洞窟産13.85 ± 0.06g(Chantakun ほか 2022)。
安全と、制度
洗浄
水にさらして不純物を除く工程です。すべての燕の巣に共通の工程ではありません。ピンセットで取り除いて整形し、乾燥させる方法もあり、どう手を入れるかは加工場によってまったく違います。数値を比べるときは、その試料が何をされたのかを確かめる必要があります。燕の巣は、洗ってあるのですか。で扱いました。
亜硝酸・硝酸
巣に含まれる成分です。洗浄済みの試料でも、家産と洞窟産で差が出ました(亜硝酸5.7 対 843.8 μg/g、硝酸98.2 対 36,999.4 μg/g/各4点/Quek ほか 2015)。ただしこの比較には、種と地域の交絡があります。
重金属
ヒ素・水銀・鉛・カドミウム・スズなどです。インドネシアの44棟の巣で、加工場の洗浄(逆浸透水で約10秒)の前後を比べると、ヒ素・鉛・カドミウム・スズは有意に低下し、水銀は低下したものの有意差はありませんでした(Wahyuni ほか 2022)。
偽和(adulteration)
別の物を混ぜてかさ増しすることです。文献で名前が挙がっているのは12物質(白キクラゲ/ゼリー/魚の浮き袋/卵白/豚皮/カラヤガム/紅藻/寒天/ブドウ糖/ショ糖/加水分解海洋性コラーゲン/グルタミン酸ナトリウム)。かさ増しは最終重量の2〜10%とされます。見分ける方法とその限界は燕の巣に、何が混ぜられてきたか。― 文献で確認できた12の物質と、見分ける方法の限界。に書きました。
MS 2334:2011
マレーシアの規格です。亜硝酸の上限を30 ppm以下と定めています(Yeo ほか 2021)。
CAIQ-RZ-2015002
中国の規格です。亜硝酸の上限は同じく30 ppm以下です(Yeo ほか 2021)。
BioNexus ステータス
マレーシアの企業に対する認定です。財務省が授与し、Bioeconomy Corporation が監査します。審査項目は技術の自社保有・研究の検証・投資額・研究体制・事業化・提携先。素材そのものの効果を国が保証する制度ではありません。
シアル酸の含量要件
どの国の規格にも存在しません。各国が定めているのは、入っていてはいけないものの上限(亜硝酸・重金属・微生物)であって、入っているべきものの下限ではありません(Yeo ほか 2021)。ですから「多いほど良い」という言い方に、規格上の裏づけはありません。
台所
戻し
乾いた巣を水にひたして戻すことです。加工場の洗浄とは目的が違う工程です。同じ重さの乾物を戻しても、戻ったあとの重さは同じになりません(水切り後重量:家産27.98 ± 1.32g/洞窟産30.78 ± 1.01g/Chantakun ほか 2022)。燕の巣を、水に戻す。― そのとき、何が起きているのか。で扱いました。
戻し汁
戻したあとの水です。可溶性固形分が溶け出していることは測られていますが、それが何であるかは特定されていません。中身の分からないものについて、飲むべきだとも捨てるべきだとも書きません。
WHAT WE DON’T KNOW YET
まだ分かっていないこと
- 官燕・毛燕・草燕の定義に、業界共通の基準があるのかどうか。私たちはまだ見つけていません
- 漂白の実態を示す一次資料に、まだたどりつけていません
- 「着色に鉄分を使う」という話の一次資料
- 日本国内で流通している製品を、統一した方法で測った公開データ
DISCLOSURE
このページについて
ツバメディアは、日本伴照株式会社が運営しています。同社は燕の巣を扱う事業者であり、中立な第三者ではありません。他社商品との比較や優劣の判定は行いません。研究の説明は、原著論文に書かれている範囲を超えないようにしています。記事のなかで商品を販売することはありません。
この用語集に挙げた数字は、いずれも公開されている学術論文からの引用です。当社の製品を測ったものではありません。また、用語の説明は記事が増えるたびに書き足していきます。
SOURCES
- Kong HK, Chan Z, Yan CSW, Lo PY, Wong WT, Wong KH, Lo CLS. Revealing the species-specific genotype of the edible bird’s nest-producing swiftlet, Aerodramus fuciphagus. Food Research International. 2022;160:111670. doi:10.1016/j.foodres.2022.111670
- Wang X, Hu D, Liao F, Chen S, Meng Y, Dai J, Dong TTX, Lao Z, Yu L, Liang Y, Lai X, Tsim KWK, Li G. Comparative proteomic analysis of edible bird’s nest from different origins. Scientific Reports. 2023;13:15859. doi:10.1038/s41598-023-41851-6
- Chantakun K, Nilsuwan K, Sripradit A, Benjakul S. House and cave edible bird’s nest: Characteristics and quality of sterilised beverages containing the selected bird’s nest. International Journal of Food Science and Technology. 2022;57(4):2447-2458. doi:10.1111/ijfs.15606
- Quek MC, Chin NL, Yusof YA, Tan SW, Law CL. Preliminary nitrite, nitrate and colour analysis of Malaysian edible bird’s nest. Information Processing in Agriculture. 2015;2(1):1-5. doi:10.1016/j.inpa.2014.12.002
- Wahyuni S, Salim MN, Aliza D, Sabri M, Rahmi E, Hambal M. An investigation of heavy metals in edible bird’s nest from Indonesia. Veterinary World. 2022;15(2):509-516. doi:10.14202/vetworld.2022.509-516
- Poon PM-Y, Sze ET-P. Development of Method for Evaluation of Edible Bird’s Nest Content in Ready-to-Eat Beverages. Journal of AOAC INTERNATIONAL. 2023;106(4):1003-1009. doi:10.1093/jaoacint/qsad038
- Khairunnisak M, Marzura MR, Bing CH, Marni S, Norzela AM, Eddy AA. Preliminary study on free sialic acid content of edible bird nest from Johor and Kelantan. Malaysian Journal of Veterinary Research. 2014:9-14. ISSN 2180-3897
- Wang M-H, Wang Z-F, Yuan M, Yang C-G, Wang D-L, Wang S-Q. Changes in the Serum and Tissue Levels of Free and Conjugated Sialic Acids, Neu5Ac, Neu5Gc, and KDN in Mice after the Oral Administration of Edible Bird’s Nests: An LC–MS/MS Quantitative Analysis. Separations. 2024;11(4):107. doi:10.3390/separations11040107
- Yeo B-H, Tang T-K, Wong S-F, Tan C-P, Wang Y, Cheong L-Z, Lai O-M. Potential Residual Contaminants in Edible Bird’s Nest. Frontiers in Pharmacology. 2021;12:631136. doi:10.3389/fphar.2021.631136