アナツバメは、家をつくる鳥ではありません。巣だけをつくる鳥です。しかも、同じ巣を二度は使いません。
同じ場所に、もどってくる。
バードハウスというのは、アナツバメが自分で選んで入ってくる建物です。人が捕まえて連れてくるのではありません。鳥のほうが気に入れば住みつき、気に入らなければ来ません。
そして、一度その場所を選んだ鳥は、同じ建物へもどってきます。同じ階の、同じ梁の、ほとんど同じ位置に。
もどってきた鳥は、巣を修理して使うのではなく、あたらしく巣をつくります。燕の巣がどこで生まれるのかで書いたとおり、巣は一度きりです。

編集部は、この鳥を「ツバメ界の TOYOTA 」と呼んでいます。
冗談のようですが、現場を見た人はだいたい同意します。
同じ工程を、同じ手順で、同じ品質で、毎回くり返す。前の個体がやったことを引き継ぐのではなく、一羽ずつが最初から最後まで自分でつくる。手を抜いた巣はすぐ落ちるので、手を抜くという選択肢がそもそもありません。
人間の工場が長い時間をかけて到達しようとしている「ばらつきの小さい仕事」を、この鳥は誰にも教わらずにやっています。編集部がこの言い方をするのは、鳥をほめるためではなく、私たちの側が学ぶ立場だという意味です。
まだ確かめていない数字
現地の生産者や、打ち合わせの場で示された資料から、編集部は次のような数字を聞いています。ただし、どれも一次資料にたどりつけていません。
なぜ、これだけ「確かめていない」が並ぶのか。理由のひとつは、この鳥の基礎的なデータそのものが、まだ新しいということです。
食用の巣をつくるアナツバメ(Aerodramus fuciphagus)のゲノムが初めて構築されたのは、2022年です。それまでは、この鳥の遺伝子配列のデータベースが存在せず、巣のタンパク質を網羅的に調べることもできませんでした(Kong HK ほか. Food Research International. 2022;160:111670.)。
人が1000年以上食べてきた素材の、つくり主の設計図が、数年前にようやく読まれた。私たちが数字に慎重なのは、そういう段階にいるからです。
このゲノムを使って巣のタンパク質を調べた結果については、「燕の巣にEGFが入っている」と言われますが。に書きました。
WHAT WE DON’T KNOW YET
- 年に3回ほど繁殖する
- 寿命はおよそ12年
- 一夫一妻で、つがいを変えない
- 巣づくりにかかる日数は、およそ30日
- 一度に産む卵は2個
- 孵化までおよそ15日
このうち寿命については、別の場で「13〜15年」という数字も示されました。12年と13〜15年では、繁殖できる回数が変わります。どちらが正しいのか、あるいはどちらも条件つきの数字なのか、編集部はまだ判断できません。
SOURCES
- Kong HK, Chan Z, Yan CSW, Lo PY, Wong WT, Wong KH, Lo CLS. Revealing the species-specific genotype of the edible bird’s nest-producing swiftlet, Aerodramus fuciphagus and the proteome of edible bird’s nest. Food Research International. 2022;160:111670. DOI: 10.1016/j.foodres.2022.111670(ゲノムが2022年に初めて構築されたこと。編集部が原著を確認)
DISCLOSURE
この記事について
ツバメディアは、日本伴照株式会社が運営しています。同社は燕の巣を扱う事業者であり、中立な第三者ではありません。
だからこそ、自社や業界に都合のいい説明であっても、根拠を確かめられないものは、確かめられないものとして扱います。
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