
ジョホールバルから、車で1時間以上。
着いた場所には、本当に何もありませんでした。
元々、ここは沼地でした。
あたり一面は沼地でした。舗装された道もありませんでした。
王様の土地です。
そんな場所を開墾して、作ったのがこのバードハウスです。
初めて連れて行かれたとき、私は「なぜここなのか」と思いました。物流も人手も、何をとっても不利に見えたからです。
でも、ツバメにとっては逆でした。
人がいないということは、騒音がないということです。
開発されないということは、森が残るということです。森が残れば、虫がいます。アナツバメは飛びながら虫を食べる鳥なので、餌が湧く場所でなければ来ません。

周辺のパーム農園では、農薬が使われていないと聞きました。敷地のフェンス沿いには花が植えられていて、虫が集まる仕組みになっています。
つまり、人にとって不便であることが、そのままツバメにとっての条件になっていました。
「ここに建てる」と決めた人がいます。
ここでいちばん考えたのは、立地の話ではありません。
何もない沼地を見て、ここに建てると決めた人がいる、ということです。
その時点では、ツバメが来るかどうか分かりません。建物を建て、音を流し、環境を整えて、待つ。来なければ、それまでです。
ツバメは、こちらの計画を知りません。投資額も、工期も、関係ありません。
為せばなる。
上杉鷹山の言葉として知られている一節があります。「為せば成る、為さねば成らぬ何事も」
私はこの言葉を、根性論として受け取っていました。やればできる、という話だと。
このバードハウスに来てから、少し違う読み方をするようになりました。
「為す」の中身が、ほとんど「待つ」だったからです。建てて、整えて、あとはツバメが決める。人間にできるのは、来たくなる条件を揃えるところまでです。
やればできる、ではありません。やらなければ、可能性がゼロのままだという話でした。
この仕事の速さについて。
燕の巣の仕事をしていて、思うようにいかないことは山ほどあります。
ツバメが来る事も、巣ができるか?も、こちらでは決められません。建物を建ててから軌道に乗るまで、何年もかかると聞いています。
だから私は、この場所のことをよく思い出します。何もない沼地に建てると決めた人が、そのあと何年も待った。その順番でしか、この仕事は成り立ちません。
DISCLOSURE
このコラムについて
ツバメディアは、日本伴照株式会社が運営しています。私はその代表取締役であり、リアン株式会社の代表も務めています。2026年9月1日より、株式会社キュアレの代表にも就任しました。中立な第三者ではありません。
このコラムは、客観報道の記事として書いていません。一人称の見聞きとして書き、事実として確かめたことは編集部の記事に分けています。そして、自分が過去に間違えて書いたことは、注を付けて残します。
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