為せばなる。― 何もない沼地に、建てると決めた人の話。

ジョホールバルから車で1時間以上。着いた場所は沼地で、周りは王様の土地でした。人にとって不便であることが、その…

執筆編集部

夕暮れのバードハウス群を斜め上から見た空撮。手前に焼けた土地が広がる

ORIGIN

この記事の出どころ

この回は、バードハウスが建っている場所そのものについて書いたものです。

バードハウスの空撮。緑の屋根が並ぶ細長い建物が3棟、草地の中に建っている
ジョホール州のバードハウス。

ジョホールバルから、車で1時間以上。

着いた場所には、本当に何もありませんでした。

元々、ここは沼地でした。

あたり一面は沼地でした。舗装された道もありませんでした。

王様の土地です。

そんな場所を開墾して、作ったのがこのバードハウスです。

初めて連れて行かれたとき、私は「なぜここなのか」と思いました。物流も人手も、何をとっても不利に見えたからです。

でも、ツバメにとっては逆でした。

人がいないということは、騒音がないということです。

開発されないということは、森が残るということです。森が残れば、虫がいます。アナツバメは飛びながら虫を食べる鳥なので、餌が湧く場所でなければ来ません。

見渡すかぎりのパームプランテーション。青空と白い雲
周辺に広がるパーム農園。

周辺のパーム農園では、農薬が使われていないと聞きました。敷地のフェンス沿いには花が植えられていて、虫が集まる仕組みになっています。

つまり、人にとって不便であることが、そのままツバメにとっての条件になっていました。

「ここに建てる」と決めた人がいます。

ここでいちばん考えたのは、立地の話ではありません。

何もない沼地を見て、ここに建てると決めた人がいる、ということです。

その時点では、ツバメが来るかどうか分かりません。建物を建て、音を流し、環境を整えて、待つ。来なければ、それまでです。

ツバメは、こちらの計画を知りません。投資額も、工期も、関係ありません。

為せばなる。

上杉鷹山の言葉として知られている一節があります。「為せば成る、為さねば成らぬ何事も」

私はこの言葉を、根性論として受け取っていました。やればできる、という話だと。

このバードハウスに来てから、少し違う読み方をするようになりました。

「為す」の中身が、ほとんど「待つ」だったからです。建てて、整えて、あとはツバメが決める。人間にできるのは、来たくなる条件を揃えるところまでです。

やればできる、ではありません。やらなければ、可能性がゼロのままだという話でした。

この仕事の速さについて。

燕の巣の仕事をしていて、思うようにいかないことは山ほどあります。

ツバメが来る事も、巣ができるか?も、こちらでは決められません。建物を建ててから軌道に乗るまで、何年もかかると聞いています。

だから私は、この場所のことをよく思い出します。何もない沼地に建てると決めた人が、そのあと何年も待った。その順番でしか、この仕事は成り立ちません。

DISCLOSURE

このコラムについて

ツバメディアは、日本伴照株式会社が運営しています。私はその代表取締役であり、リアン株式会社の代表も務めています。2026年9月1日より、株式会社キュアレの代表にも就任しました。中立な第三者ではありません。

このコラムは、客観報道の記事として書いていません。一人称の見聞きとして書き、事実として確かめたことは編集部の記事に分けています。そして、自分が過去に間違えて書いたことは、注を付けて残します。

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