すぐ効きますか、と聞かれると、困ります。

展示会でも、セミナーでも、必ず聞かれます。「どのくらいで変わりますか」。私は答えられません。決まりのせいだけで…

執筆編集部

閉じきらない円相のイラスト。筆が離れて隙間が開いたまま残り、その隙間に金の細い印が置かれている

「すぐ効きますか?」

この質問をされると、困ります。

答えを持っていないからです。

答えられない、という答え。

展示会でも、セミナーでも、必ず聞かれます。「どのくらいで変わりますか」「何日で分かりますか」

私は、答えられません。

燕の巣は食品です。医薬品ではありません。だから「何日でこうなる」という言い方が、そもそもできません。これは決まりの話です。

ただ、私が困る理由は、決まりのせいだけではありません。

人の体で何がどれくらいの速さで起きるのかを、私は確かめていません。確かめていないことを、答えるわけにはいきません。

それでも、この質問について考え続けています。

答えられないと言って終わりにすると、質問した方に何も残りません。だからここでは、質問の中身そのものについて書きます。

「すぐ効きますか」と聞くとき、私たちが本当に確かめたいのは何なのでしょうか。

たぶん、無駄になっていないかどうかです。

お金を出した。時間をかけた。それが空振りだったら嫌だ。だから、早いところ確かめておきたい。

その気持ちは、私にもよく分かります。私自身、そういう人間です。

一切皆苦。

私は、物事を考えるときに仏教の言葉を借りることが多いです。この癖は私の環境がそうさせております。

一切皆苦、という言葉があります。すべては思い通りにはいかない、という意味です。

思い通りにいかないのが普通なのだと先に決めておくと、思い通りにいかなかったときに、そこから苦しみが増えません。「こうなるはずだった」という前提を自分でつくると、そこからずれた分だけ苦しくなります。

「すぐ効きますか」という問いには、その前提が入っています。

足るを知る者は富む。

もうひとつ、よく思い出す言葉です。

足るを知る者は富む。いま手元にあるものを数えられる人が、豊かなのだという意味に受け取っています。

この言葉を、私は自分に向けて使っています。人に向けて使うと、説教になってしまうので。

私は明らかに足るを知っていませんでした。伝えたい、届けたい、もっと出したい。その結果、社員から「それがエゴなんですよ」と言われました。あれも、同じ話だったのだと思います。

咲くことばかり考えるのではなく、根を育てる。

花は、目に見えます。根は、見えません。

見えるものだけを数えていると、見えないところで起きていることを勘定に入れられなくなります。

燕の巣の仕事をしていて、いちばん時間がかかっているのは、根のほうです。産地でどう採られているのか。誰が採っているのか。どういう検査をしているのか。それを一つずつ確かめる作業には、派手なところがありません。

ツバメディアという媒体をつくったのも、そのためです。花の話は、他にいくらでもあります。

急がず、焦らず、怠らず。

急ぐな、焦るな、だけなら、何もしなくていいという話になってしまいます。最後に「怠らず」が付くことで、逆の意味になります。

やることはやる。ただ、結果が出る速さを自分で決めようとしない。

智慧眼。

智慧眼という言葉を教わったことがあります。

損か得か、好きか嫌いかではなく、これが本当に大切なことかどうかを見抜く目、という意味だと聞きました。

「すぐ効きますか」と聞かれたときに、私が答えたくなってしまうのは、その場で相手に良く思われたいからです。損得の目です。

その目で答えると、確かめていないことを言ってしまいます。

だからいまは、こう答えることにしています。

分かっていることだけ、お伝えします。

この答えは、その場では歓迎されません。歓迎されないほうを選ぶために、ツバメディアをつくりました。

確かめられたことは編集部の記事に書いてあります。まだ分からないことは、分からないままに書いてあります。

DISCLOSURE

このコラムについて

ツバメディアは、日本伴照株式会社が運営しています。私はその代表取締役であり、リアン株式会社の代表も務めています。2026年9月1日より、株式会社キュアレの代表にも就任しました。中立な第三者ではありません。

このコラムは、客観報道の記事として書いていません。一人称の見聞きとして書き、事実として確かめたことは編集部の記事に分けています。そして、自分が過去に間違えて書いたことは、注を付けて残します。

アイキャッチのイラストは、ツバメディア編集部が画像生成AIを使用して制作したものです。実在の場所や品物を撮影した写真ではありません。

POPULAR

よく読まれている記事

  1. 燕の巣を知る燕の巣って、本当に鳥の巣? 意外と知らない7つのこと。
  2. 科学する燕の巣と、アレルギーのこと。
  3. 産地と自然バードハウスの燕の巣は「養殖」なのか。マレーシアで見た、アナツバメと人の関係。
  4. 燕の巣を知る燕の巣は、洗ってあるのですか。
  5. 燕の巣ナビゲーター|時 昴【渡航記・前編】バードハウスへ行くはずが、飛行機が飛ばない。― マレーシア珍道中