バードハウス? いえ、バードホテルと呼びたい。

国境を越えて、ジョホールバルへ。関税で睨まれ、名前を褒められ、5%納めて。着いたバードハウスは、アナツバメの快…

執筆編集部

朝のバードハウス屋上の通路。塔屋が並び、空にアナツバメが舞う

ORIGIN

この記事の出どころ

この記事は、2025年6月8日に配信したメールマガジンをもとに、ツバメディア編集部が再構成したものです。公開日は配信日に合わせています。

この回については、出どころをもう少し詳しく書いておきます。ここに書かれている出来事は、2025年6月3日のことです。時 昴は出張直後の2025年6月8日にこの話を配信し、その約10か月後、2026年4月29日に「ちょうど一年前を回想しながら」と前置きして、同じ話をあらためて配信しています。ツバメディアは、連載の時系列が読者に伝わるように、公開日を最初の配信日に合わせています。

メールマガジンにあった挨拶、告知、書籍やSNSの紹介、商品の案内、および取引先の個人名は落としてあります。そして、当時の私の理解が、いまの編集部の理解と食い違っている箇所には、編集部注を入れました。直さずに残し、あとから注を付ける形にしています。

シンガポールのチャンギ空港から、バスで国境を越えます。川を一本渡っただけで、空気も、街の表情も、まるで別世界でした。

高級ブランドショップがひしめく煌びやかなシンガポールから、一転して、自然が深く残るマレーシア・ジョホールバルへ。

で、早々にイミグレーションで止められました。

現地のスタッフに届けたかった荷物が19箱。関税チェックで、睨まれ、指差され、手招きされました。

「え? なに? こわ……」と思っていたら、急に満面の笑み。

職員さん「SUBARU? Nice name! Do you know STI?」

いきなり車の話です。名前を褒め倒されました。「私が初めて買った車はスバルです」なんて冗談を交えつつ、和やかに。

そして最終的には、きっちり関税5%を納めさせていただきました。マレーシア、すごい交渉術の国です。

バードハウス。いえ、私はバードホテルと呼びたい。

税関を抜けると、GLYKENのエリック社長がイミグレーションまで迎えに来てくれていて、そこから2時間かけて、バードハウスへ案内してくれました。

着いてみて、「バードハウス」という呼び方が、しっくりこなくなりました。

清潔さ。静けさ。温度と湿度。音響。どれも「アナツバメにとっての快適さ」を基準に設計されている。だから私は、バードホテルと呼びたい。

あとで知ったのですが、エリックさんはもともと建築の仕事をされていました。人間の住環境を設計していた人が、いまはアナツバメの快適性を真剣に考えている。そう聞いて、なるほどと思いました。

現地で聞いた話では、ここに暮らすアナツバメは、朝6時45分ごろに一斉に飛び立ち、19時半ごろに帰ってくるそうです。巣づくりは夫婦で協力する、と。

5時間のセミナー。商品の説明は、一度も出てきませんでした。

その後、GLYKENのオフィスで個別にセミナーをしていただきました。気づけば5時間。

エリックさんが語ったのは、商品の説明ではありませんでした。

エリック「この巣には、命が宿っている。私たちは素材ではなく、命を扱っているんだ。」

その言葉で、部屋の空気が変わりました。

マレーシアは多様性の国です。マレー系、華僑系、インド系。すべてを受け入れてきた歴史のなかで、違いを認めて共に生きるという知恵が育っている。エリックさんはそれが品質の背景にある哲学だと話していました。彼自身も仏教徒です。

「SUBARU、QOLだよ」と怒られた話。

夜は現地のタイ料理屋へ。エリックさんは英語、マンダリン、マレー語、広東語を自在に行き来します。

その席で、私は怒られました。

エリック「今回、あなたはいつもと比べて元気がないように見える。それは移動の手段だ。長距離をLCCで移動するのはよくない。2時間までならいいが、それ以上はビジネスクラスで移動しなさい。」

エリック「私はあなたとの再会を楽しみにしていた。だが、あなたがいつものように元気でないのがすごく気になった。自分のパフォーマンスを最大にすることは、何よりも重要なことだ。SUBARU、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)だよ!」

私は、コストばかりを気にして、自分の時間の価値を見失っていました。

質素倹約は大事だと思っています。でも、せっかく時間をいただいている相手に、自分のパフォーマンスが低い状態で会うのは、失礼な話でした。深く反省しました。

「私は研究者。あなたは、伝える人だ。」

その夜、エリックさんが静かに言った言葉が、いまも忘れられません。

エリック「私は研究者。あなたは、伝える人だ。」

前回の記事で、私は徹夜のフライトの中で「伝える役割として生きていく」と決めた話を書きました。その話です。

それを、本人から言われた。正直に言うと、私は英語が完璧に分かっていたわけではありません。でもこの言葉だけは、通訳も文字起こしも何も要らなかった。まっすぐ心に響いてきて、ただただ、泣けました。

(後で翻訳アプリで確認して、聞き間違いではなかったことは確かめました。)

エリックさんは、こうも言っていました。過去半年、私たちの展示会や販売の姿勢、このメールマガジンまで、静かに見続けていたそうです。そのうえで「売りたいのではなく、理解して届けようとしているチームだ」と。

同時に、覚悟と責任を感じました。

DISCLOSURE

このコラムについて

ツバメディアは、日本伴照株式会社が運営しています。私はその代表取締役であり、リアン株式会社の代表も務めています。2026年9月1日より、株式会社キュアレの代表にも就任しました。中立な第三者ではありません。この記事に登場するGLYKEN社は、当社の取引先です。

だからこそ、この記事は取材記事としては書きません。一人称の見聞きとして書き、事実として確かめたことは編集部の記事に分けています。

そして、自分が過去に間違えて書いたことは、注を付けて残します。

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